日本人の精神は「武士道精神」という神話
『武士道精神』という言葉があります。
最近は野球でもサムライジャパンなんて名前をつけたりしちゃって、「日本=サムライ」、「日本人=武士道精神」というのがすっかり定着しております。
しかし!!
そんなところに水を差すようで悪いのですが、実はこの「日本人の精神=武士道精神」という説には、様々な方面から疑問が投げかけられています。
その根拠として、よく挙げられるのが、過去の時代における武士の人口比です。
こちらをご覧下さい。
江戸時代の武士の比率
http://okwave.jp/qa/q742564.html
総人口約3000万人のうち6~7%ということになります。
http://www.d4.dion.ne.jp/~ponskp/bakuhan/bakuhan.htm
人口の7%に過ぎぬ武士が84%の農民を収奪しながらその地位を保っていた。 太平の中で貨幣流通が活発化しそれにともない商人が台頭してきた。
このように、武士最盛期と言われている江戸時代ですら、武士は人口全体の6〜7%しかおりませんでした。
残りの93〜94%の方々は農民・商人・工人などのいわゆる【平民】と呼ばれる人達です。
つまり、【武士道】を学んだことのある日本人なんて、ほとんどいなかったということです。
日本人なら誰でもサムライの末裔というわけではないのです。
当時の日本人人口の大部分を占めていたのは、約七割の「農民」でした。
ということは必然的に、現代に最も受け継がれているはずの精神は、武士ではなく、【お百姓さんの精神】ということになります。
あれ、なんかサムライに比べると一気に地味になりましたね。まぁでも事実なんだから仕方ない。
ではどうしてこのような勘違いが生まれたかというと。
そもそも、室町時代まで「武士道」という考え方はありませんでした。
歴史の教科書にもよく出てくる「御恩と奉公」という言葉からも分かるように、当時の武士は戦いで給料をもらっている傭兵集団でした。
そのため、主君に忠を尽くすどころか、「給料くれなきゃ働きません」という、とても【ビジネスライク】な考えだったことがわかります。
これに少し変化が加わるのが江戸時代です。
江戸時代になると大きな戦争も無く、平和な時代が続きます。
すると、これまでは常識だった「ご恩と奉公」という制度が崩れていきます。
戦争が無いので、奉公できる機会がありません。
奉公ができなければ、貰えるご恩もありません。
そこで新たな道徳的価値観として登場したのが、中国から流れて来た儒教を日本版にアレンジした「士道」でした。
「親には孝行」「主君に忠義」などのお馴染みの文言が、ここで初めて出てきます。
これをもとに当時の武士達は、「給料は上がんねぇかもしんねぇけど、ちゃんと働けよ。それが正しい生き方なんやで!!」という倫理を求められてきました。
なんかこうして書いてみると、江戸版の社畜量産システムっぽいですね。
さて、そんなこんなで明治時代に至ります。
ここで歴史上初めて、「武士道」という単語が出現します。
この当時の日本は、欧米諸国からとてもバカにされていました。
「日本? Oh、東洋の田舎の島国デスねー」
みたいな言われようでした。
そんなある日、欧米諸国の誰かさんが言いました。
「日本には宗教が無いらしいデスねー。宗教無しに、彼らはどうやって道徳教育をするんデスかねー」
「HAHAHA、お猿さんにはまだ早いんじゃないデスかー」
当時の欧米では、キリスト教などの宗教を主軸にして、あらゆる道徳を教育するのが一般的でした。『人のものを盗んではいけません。何故なら神様に怒られるからだよ』みたいな。
しかし当時の日本には、とくにこれといった宗教がありませんでした。
いちおう仏教とか神道はあるけど、そんな国民全員が毎週ミサにいくレベルではないし……
しかしここで、とある人物が「日本にも欧米でいうところの宗教みたいなもの、あるし!!」と宣言しました。
新渡戸稲造さんです。
歴史の教科書で名前くらいなら聞いたことがあるのではないでしょうか。
彼は、江戸時代に流行した「士道」のことを「武士道」と変えて呼び、『これが日本人の精神なのである』といった内容を本にまとめます。
そしてそれを世界に発信します。
新渡戸さんは江戸時代の実際の武士人口の比率をご存知なかったのかもしれません。
あるいは知っていたけれども、欧米諸国にバカにされないために、あえて虚言を吐いたのかもしれません。
真相はわかりませんが、とにかく彼の書いた「武士道」という著書は、世界中で大ヒット!
欧米諸国の人々に、「日本=サムライ」というイメージを認知させる最初の第一歩となりました。
その時代からさらに約百年後
この新渡戸さんの著書が、アメリカの文化人類学者のルース・ベネディクトによって再発掘されました。
第二次世界大戦が終わってから、アメリカでは日本人を研究していました。東洋の小国である日本が、どうしてあんなに強かったのか? なんであいつらはカミカゼ特攻なんて出来たのか?
これらを研究していたルースが、たまたま新渡戸稲造の武士道を読んでしまったから、さぁ大変です。
主君には絶対忠誠!
↓
カミカゼ特攻!
ここで、「特攻精神」とゴチャ混ぜになった、ルース版ブシドーが生まれます。
この後、ルースは「菊と刀」という本を出版しベストセラーに。
ルースのカン違いは世界中に広まり、「日本人=サムライ」 「日本人の精神は武士道精神」というイメージが完全に定着しました。
つまり、現在の日本で流行ってる武士道は、アメリカから逆輸入されたモノだったということです。
ということは、「武士道精神を忘れるな」とか言ってる日本人こそが、実は最もアメリカかぶれな日本人ということになります。
例えばこの人達とか。
いまの日本人、とりわけ若者たちになにが欠けているのかと考えると、先達が残してくれた偉大なる精神文化・武士道こそが欠けているのではないかと思います。
武士の末裔の男として、自分の家庭の繁栄なり確立のために、武士道をいま改めて自分にどう取り込むかということをそれぞれの父親たちは素直に考えてみるべき時期に来ているのではないか
by 石原慎太郎(作家・政治家)
藤岡さんも石原さんも、とんでもないアメリカかぶれ野郎です。
これに伴い、サムライジャパンも名称を改める必要があるかもしれません。
百姓ジャパンとか。
あ、なんか意外にゴロが良いじゃないですか。
百勝できそうで。